削りすぎか…

　エンジンチューンの中でもっとも手間がかかり、もっともくたびれて、その割には効果のほどが実感しにくいのがポート研磨である。前のヘッドでは気合いを入れて、1000番まで磨いた上に赤棒、青棒、WAKOSのメタルクリーンで磨きまくってぴかぴか鏡面化にした。もちろん、効果があると信じての作業であった。

　しかし、ポート研磨だけしてエンジンを組むということはあまりない。ヘッドチューンの中でもっとも効果的と思われるヘッド下面の平面研磨を同時に実施することになる。実際のところ、ヘッドチューンでパワーが向上するほとんどの部分が圧縮比の向上のためであると考えられるので、ポート研磨がどれだけ効いているかは、正直のところ分からない。

　しかし、もっともチューンしている気分になれるのもポート研磨であることも事実。どれだけ芸術的な輝くポートにしたところで、エンジンを組んでしまっては見えない、という本当に報われない作業なのであるが、プライベーターを魅了してしまう。効果云々ではなく、「絶対効いているはずだ」と、夢を追い求めているのである。

　だから、ポートの光り具合はプライベーターの心意気とも言える。がしかし、今回はできるだけ早く動くようにするという至上命題があった。ポートの光り具合の優先順位は低くなってしまったのである。あまり光っていないポートを見せるのが恥ずかしいので、くどくどと前口上を書いちゃった。

　今回は４連スロットルを取り付けるのが前提のヘッドなので、ポートの形は比較的自由であった。ノーマルのインテークマニホールドでは、入り口は拡大できても、奥の方までは工具が届かないから拡大できない。が、４連スロットルでは吸気管内の加工は比較的簡単にできる。だから、目一杯、ポートを拡大することにした。

　インテークマニホールドの入り口に、ガスケットの跡がついていたのでそれを目印に拡大する。ガスケットぎりぎりまでポートを拡大するのだ。目一杯広げるのであれば、ガスケットなんか無視してもっと大きくすればよいのだが、はい、勇気がなかったんです。

　手順は前に書いた通りだから改めて記す必要もないだろう。とりあえず、削って簡単に磨いた後の吸気ポートはこんな感じ。

　言い訳はするまい。困ったのは前のヘッドよりも「鬆(す)」が多かったこと。すがなくなるように削るとどうしても削りすぎてしまう。排気ポート側がもっとひどかった。削りだしたら、すが出るわ出るわ。鏡面化なんてすぐあきらめた。

トヨタAE101の４連スロットルをB6エンジンに取り付けるアダプターをあてがってみたところ。

　左上にある黒いぶつぶつはすべて「す」である。こんな調子で固まってぼろぼろと出てくる。目立たないように削り込んだら、削りすぎになってしまう。

　こうやって、だらしなく妥協してポート研磨は終了。と思ったら、まだ全然終わっていないことに気が付いた。４連スロットルを取り付けるアダプターや４連スロットル側についているインマニと段差があっては、吸入効率を下げてしまう。スムーズに接続されるよう、アダプターとスロットル側のインマニも加工が必要である。

　とりあえず、シリンダーヘッドにあてがってみるとこんな感じ。Freedomコンピューターを販売しているE&Eシステムの４連化キットについてくるアダプターなのだが、かなり余裕をもって造られているらしい。（ピンぼけなのはご容赦）

　見ての通りの段付きがある。ポートを拡大したこともあるが、説明書に「余裕を持たせてある」と書いてあるとおり、ヘッド側のばらつきに対応できるよう小さめの径で造ってあるみたい。問答無用で削るが、なにしろ削る量が半端じゃないから苦労した。もちろん、400番程度までは磨き込み、光らせた。

　４連スロットル側のインマニも問答無用で加工。トヨタの鋳物もそんなに大したできではなかった。

　ここで説明しておくと、E&EのB6用キットでは、AE101やAE111のスロットル部分だけではなく、ヘッドと合体させるインマニ部分も含めて流用する。トヨタが設計した配管などがそのまま生きるので安定性は間違いがないのだが、トヨタのノーマルインマニにさらにアダプターを付けてヘッドに取り付けることになるので、キャブ車みたいにスロットル部分が長くなってしまう。「４連はできるだけ短く、角度は鋭く上に！」と考えている人にとってはあまり良い取り付け方ではないかもしれない。僕はそれほどこだわらないのだが。

　トヨタのインマニを削っていて疑問に思ったのだが、せっかくスロットル部で43mmの口径があるのに、どうみてもインマニ側が口径が小さくなっているのだ。AE101のノーマルエンジンではスロットルの入り口側も象の鼻のような形のエアファンネル？が付いていて、口径が絞ってある。ここら辺の口径は大きくしすぎると中低速のトルクが出ない、ということなのだろうか。